第156話

ルナ・マーガレットとイザベラは、もういなかった。

アルファのセバスチャンは動けずにいた。頭を両手で抱え、次には指を首の後ろで組み、また元に戻す――ここ十数分の痛みを少しでも和らげられる座り方など、この世にないと言わんばかりに。

セリーナは廊下の向こうから彼を見つけ、完全に見当違いの解釈をした。母親と妹がまた金のことで彼を責め立てたのだと思い込んだのだ。足取りも視線も柔らかくして近づいていく。

「セバスチャン、ねえ。どうしたの? またお母さまとイザベラに言われたの? ごめんなさい、私――」

彼が顔を上げた。

目は真っ赤で、剥き出しだった。鎖を噛みちぎる寸前の獣のように。

言葉が喉の奥...

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